高級腕時計とSNS
ロレックスのフラッグシップであるデイトナの値動きは本当にわからない。
基本的にジュエリーや貴金属の価格は素材とブランドに影響される。
ブランド力と素材の価値、そして素材の使用量、それに宣伝費云々がかかってくるわけだが、ロレックスに関してはそこに人気度という付加価値が追加される。
ブランド力と人気度というのは似ている。
しかし人気度はブランド力という括りの内外両方に存在し、内外の人気度というものが互いに作用し合うのである。
例えばあるモデルが超人気になったとする。
これはブランド力の外にある力が働いて、その人気がブランド力に波及し、ブランド全体の人気を底上げすることになる。
ブランド力の内部にある人気度が、展開される商品に過剰な人気を生み出しやすくなり、外向きにエネルギーが発せられる。
この相互に働く人気具合がバブルであり、投機的な意味を持つ存在になったりするのである。
ロレックスはもはや腕時計ではなく資産という位置付けであり、有価証券やゴールドなどの金融商品になっているのである。
冒頭での発言、値動きがわからない、というのも当然といえば当然なのである。
現代のロレックスは20年前のロレックスではないのだ。
当時からそのような気配は見せていたが、燻っていたロレックスの真価が爆発的に発揮されるようになった大きな理由の一つにSNSが挙げられるのである。
SNSの目的は主に、見せることと、共有することであり、見せることは魅せることと言い換えることができる。
魅せる目的というのはやはり承認欲求なのである。
ロレックスの価値がそのまま所有者の価値と直結し、高い尊敬や憧れを集めることが出来るのも事実だ。
人間には生きるための欲が4つあり、その4つというのは
食欲、性欲、睡眠欲、そして承認欲や名誉欲、
である。
ロレックスやその他の高級時計があまりにも高額で取引されている背景にSNSの存在は欠かせないだろう。
SNSは消費行動を大きく変え、世の中の購買行動の大きな原動力となっている。
ロレックスはそのエネルギーのベクトルが大きく向いた最たるブランドであり、それだけ元々にあった価値が真っ当に評価されている現れなのではないかと思われる。
僕はそういった承認欲求や名誉欲に関して全く否定するつもりはない。
人間誰しもそういった欲を持っており、その方向性が人によって違うだけだからだ。
車であったり、時計であったり、ファッションであったり、昇進であったり、起業であったり、美であったり、さまざまだ。
さて、
パテックフィリップやオーデマピゲ、そしてロレックス、腕時計ブランドの中で大きく価値をあげているメーカーは元々の時計としての価値が高い存在で、SNSで視覚化された人気度合いがさらにその人気に拍車をかけた結果、投資という側面が主の顔になりつつあるのである。
あらゆる世界情勢や経済情勢の変化によって、人々が真っ先に考えるようになったのがお金の存在であり、根源的な意味でいうところの自己防衛と直結するようになった。
その結果の一つとして頭が良く、経済的にも優位に立つ立場の人たちが真っ先に腕時計に投資していったのである。
実際のロレックスをはじめ、パテックフィリップやオーデマピゲの値動きを見るのは面白い。
腕時計が好きだからという理由もあるが、僕は腕時計が投資対象になっているという、過去には無かった購買行動(あっても今よりもだいぶ潜在的であった)がどういった未来を迎えるのかに興味がある。
モデルにもよるが、このまま高騰し続け、フェラーリやランボルギーニの価格を超えるのか、それまでにバブルが崩壊するのか、全くもって予想がつかない。
腕時計、ミクロ的な観点での存在そのものとしても、マクロ的な視点から見た経済を動かす一ツールとしても、とても面白い存在である。
パテックフィリップ ノーチラス 5711r, 5711/1rの価格
さて、今し方腕時計がフェラーリやランボルギーニを超えるのかという話をしたばかりであるが、実は高級車を超える価格にまで高騰しているモデルは実際にすでに存在している。
パテックフィリップのノーチラスだ。
僕が一番好きな腕時計である。
どういうわけか、最初に見て以来忘れる事が出来ず、時が経つごとにどんどんと惹かれいる。
僕が欲しいと思った頃にはすでに500万円くらいになっていて、腕時計に500万円というと、当時としては高値掴みになるだろうと思っていた。
なんのこっちゃ、今では価格は数倍に化け、ゴールドモデルに限っては世界限定何台みたいなスーパーカーが買える価格にすらなっている。
まさかトゥールビヨンや永久カレンダー、ミニッツリピーターなどの複雑機構が一つも入っていないタイプの腕時計がこうも値上がりするなんてほとんどの人は考えてなかったのではないでしょうか。
当然、これらのスイスウォッチの価値が徐々に上昇していくだろうという予想は立っていたであろうと思う。
しかしここ数年での価格の跳ね上がり方は異常で、あまりにもバブル感がある気がするし500万円くらいだった当時同様、今も高値掴みになるのではないかとも思えるし、過去の失敗からそう断定するのはよろしくない気もする。
とはいえ、価格が価格だけになかなか超富裕層でない限り手を出すにはちょっと怖い価格帯だ。
今後、パテックフィリップのノーチラスという存在はどういう感じになっていくのだろうか。
今現在、2024年3月某日のノーチラスの価格を記録として残しておくとすると、
レザーストラップモデルが中古でも1600万円ほどで、ブレスレットタイプのものが4500万円
ほどである。
これはレッドゴールドの素材のものであるが、ステンレス素材であっても同じく基本系のブレスレットモデルが2000万円前後といった具合である。
恐ろしく高額になっているが、これがパテックのブランド力なのかと、物凄い破壊力を感じる。
腕時計でスーパーカーが買える価格になろうとは、誰が予想したであろうか。
確かにポルシェやフェラーリなどの高級車などの価格帯も以前よりも上昇しているが、値上がり率で言うとやはりパテックの方が格段に高い。
上述したようにRef.5711/1rのゴールドブレスレットモデルに関しては良い家が買えてしまう。
ご覧の通りめちゃくちゃ美しい腕時計ではある。
ゴールドの5711系はブレスレットタイプとレザーストラップタイプがあるわけだが、
比べてみると、どちらもカッコ良すぎて、見た方を欲しくなる。
同時に見ると判断ができないくらいかっこいいのだ。
言うなれば、キーラナイトレイとスカーレットヨハンソンが同時に現れてどちらか選ばないといけないような、嬉しいが選ばなかった選択肢が存在するという地獄のような後悔を生み出しそうな選択がノーチラスのゴールドを選ぶときに起こってしまう。
まあちょっと違うが、端的にいうと選択が難しいということである。
とは言え僕ならレザーストラップのモデルの方を選ぶであろう。
もちろん価格帯が一番の理由であるが、ゴールドブレスレットにないメリットとして、ブラウンのレザーストラップの渋い大人っぽさがブラウンダイヤルと非常にマッチしていて、女性のファッションでいう靴とカバンを合わせたような調和がこちらのモデルからは感じられるのである。
次にDバックルがレザーストラップと非常によくフィットしていて、パテックフィリップのロゴ紋様がめちゃくちゃかっこいいのである。
そして最後はブレスレットタイプと比べると軽いこと。
使い勝手の良さは地味に効いて来そうな気がする。
レザーストラップは交換可能だし、ぶつけても傷がついてショックを受けそうなブレスレットタイプに比べてその辺りの心理的負担が軽いのもやはり嬉しい。
最初に挙げたように価格がおよそ1/3であることも何より嬉しい。
男が最後の仕上げてして手に入れたい極上の腕時計を体現したのがノーチラスのゴールドなのではないかと思っている。
ちなみに僕はスカーレットヨハンソンの方が好きだ。
まとめ
まとめると、今はあらゆる社会インフラや世の中の動きが腕時計バブルを加熱させる方向に向かっていると言える。
SNSではより良い時計や車を、そして人生を「見せる」動きがあり、そのアクティビティが社会全体というマクロな目線で見ても大きなプライオリティを持ちつつある。
SNSにそこまでの力はないと思われるかもしれないが、オンラインで受ける影響は自身が思っているより大きく、無意識下で見た物事を行動に移しているということは意識上には上がってこないものなのである。
メディアの主流がインスタグラムやX(旧ツイッター)にとって変わっている現在、僕たち一人一人が社会の波を生み出しているということになる。
これまで僕らが受ける影響はテレビ一辺倒であった。
エンターテイメントやニュースなどの情報を受動的にキャッチしていたテレビはサブ的な役割として残りつつも、人と人が繋がることがその本質となるSNSがメインとなり社会の根幹として大きなインフラとなっている。
SNSを利用していない者も社会の流れに影響されるのは至極当然である。
人と人とが繋がれば良いものはやはり欲しくなるし、腕時計に関しては男性からすれば当然興味の対象となる。
そういった流れは人気のあるものをより人気にし、ブランドはよりブランドになっていく。
パテックフィリップやロレックスなどの人気がさらに高まるわけであり、それらはより強固なブランド力を構築していく。
その結果が今日のノーチラスやデイトナフィーバーであると思われるのだが、数年前の僕ならノーチラスが4000万円もするなんて全く予想出来なかっただろう。
それでも欲しいと思えるほどのブランド力をパテックフィリップは持っているし、実際ノーチラスの高級感は半端なくすごい。
ノーチラスは世界中の男性の垂涎の的である。