オーデマピゲ 2024年 新作ロイヤルオーク
2024年の腕時計事情もまた素晴らしいものになっている。
時計の見本市、ウォッチ&ワンダーズの発表前に既に新作を発表しているところがいくつかあるが、なかなかに上手いやり方だと思う。
パネライの新作モデルの件でもお話ししているが、いわゆる食前酒的な意味合いがあるのではないかと言える。
食欲増進のために飲む食前酒や、大きな食事の前に何か少し食べておいて胃袋を膨らませておくほうが、メインディッシュをたっぷりと食すことができるのである。
この場合、ウォッチ&ワンダーズの前に飽きが来ることを防ぎ、忘れることを防止することができるわけであるが、新年早々に新作を発表してもらうと、ファンとしては楽しみが増えるのである。
言うなれば真夏の大きなお祭りの前にささやかな飲み会というか、集会というか、余興という言葉がぴったりである。
さて、オーデマピゲが大きな見本市の前に余興をしてくれたのであるが、これがなかなかにすごい新作を見せてくれている。
オーデマピゲ ロイヤルオーク コンセプト フライング トゥールビヨン “タマラ・ラルフ” 限定モデル Ref.26630OR.GG.D626CR.01
オーデマピゲ ロイヤルオーク コンセプト フライング トゥールビヨン “タマラ・ラルフ” 限定モデル Ref.26630OR.GG.D626CR.01の一覧、価格、在庫などの最新情報はこちら>>
オーデマピゲ ロイヤルオーク コンセプト フロステッドゴールド フライング トゥールビヨン Ref.26630OR.GG.D326CR.01
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ロイヤルオーク コンセプト フライング トゥールビヨン “タマラ・ラルフ” 限定モデル Ref.26630OR.GG.D626CR.01
このモデル、見てとても驚いた。
なにせこんなロイヤルオークは初めて見たわけであるからだ。
どういう構造をしているのかというのが最初感じたことであるが、実際どういう感じなのかは動画で見ていただいた方がわかりやすいと思う。
非常に美しいのであるが、まず構造が非常に面白い。
簡単に一言で説明するならば、ダム穴のような蟻地獄のような、吸い込まれそうなすり鉢型を色の違うレイヤーで表現している感じ。
どういったコンセプトがあるのかはわからないが、実際にブラックホールのように吸い込まれそうになる見た目だ。
大きさの違うゴールドとレッドゴールドが混ざったような綺麗なコッパーのプレートが重なってそのようなすり鉢型を形成しているのであるが、後でカラーリングの説明はするとして、これがなかなかに見ないタイプの文字盤である。
数多くの腕時計を見てきたがこのようなモデルは初めてである。
“ブラックホール”の中心部にはトゥールビヨンが配置され、もうこれだけで家が買えるんじゃないかというような価格帯なのであろうということは時計好きの方なら察しがつくであろう。
そして何より恐ろしいのがただのトゥールビヨンではなくフライングトゥールビヨンという事実がまた時計ファンを震え上がらせる。
というのもトゥールビヨンが高額な複雑機構であることはご存知のことと思われるが、フライングトゥールビヨンに関しては知名度がグッと落ちる。
簡単に説明すると、トゥールビヨンのキャリッジを支えるブリッジをなくし、トゥールビヨンが浮いて見えるようにした技術を採用しているものをこのように呼ぶわけだが、まさにフライングなのである。
正確に言えばブリッジをなくしたり、見えにくくしたり、隠したり、数を減らしたりと、メーカーによってさまざまな工夫を凝らしている部分である。
フライングトゥールビヨンを使用しているということは、まさに美を追求したモデルに仕上げたかったという現れであり、トゥールビヨンの特性上ブリッジがないことは安定性を損なわせる可能性があるわけであるが、そこはオーデマピゲが持つ高い技術力がそれを可能にしている。
ブリッジがないということはトゥールビヨンのキャリッジを軽く作らないといけないという前提条件が生まれる。
そこにダイヤモンドをいくつもあしらったものに仕上げ、さらに安定性の確保を実現させているという点で、オーデマピゲの高い技術力を感じるのである。
時計ファンが恐怖を感じ震え上がるというのはこの点である。
価格帯が恐ろしいことになるからだ。
尤も、オーデマピゲのトゥールビヨンを購入するような顧客はこのようなことを気にすることはないであろうが。
男性から見ても実に美しく調和の取れたジュエリーウォッチであると感じるが、それだけでなくダイヤモンド付きフライングトゥールビヨンを装備させるという、時計としての価値も十分以上に備わったモデルを2024年初っ端から投入してくることにオーデマピゲの本気度を感じる。
そもそもこの美しい腕時計、どういった背景で作られたのであろうか?
日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、Tamara Ralphさんとのコラボレーションとして誕生したのがこのモデルなのである。
タマラ・ラルフさんはオートクチュールのデザイナーであり、ドレスなどの作品を見たが、実際すごく美しい綺麗なデザインをされている。
男の僕から見てもセンスが良いと感じた。
非常に美しくもありフェミニンでラグジュアリーでありながら一粒のかわいらしさという絶妙な配合でブレンドされたドレスといった感じで、女性からすると喉から手が出るほど欲しくなったりするのであろうと感じた。
特にウェディングドレスに関しては、非常に思い出深い結婚式になるであろうと思う。
ドレス自体も美しいが、ドレス自体が放つ高貴な印象というのがオーデマピゲのブランドイメージと調和が取れているというのが第三者の目からでも伝わってくるのであるが、カテゴリが違うフィールドでもこのようなコラボレーションが可能であるということだ。
実際多くの時計メーカーがそのようなコラボレーションをしているが、女性に向けたコラボレーション自体が少ない中でのこのような美しいフュージョンは男性目線からでも目の保養になる。
実際今回の腕時計を見てみても、男性が着用しててもおかしくないような雰囲気が少しある。
時代性とでもいうのか、ピンクゴールドを着用することに違和感がなくなりつつある時代に入っていると言える。
ロレックスのエバーローズゴールドなどはその最たる例である。
今回のコラボウォッチのベースとなっているのが中央のドレスであると思うが、タマララルフさんのテーマカラーとして一番印象の強い、いわゆる彼女のブランドカラーが今回紹介しているロイヤルオークとコラボしているのであろう。
実に美しい。
価格は公開されておらず、公式ホームページなどにも一切記載されていない。
僕の予想ではおそらく3000万円くらいであろうと思うが、この腕時計はすぐになくなると思う。
通常何かのコラボモデルというのは訴求力に乏しい場合が多い。
腕時計は腕時計ブランドとしてノンコラボで勝負して欲しいと思うことも多く、コラボ対象が魅力的であっても個人的な思い入れがない場合はなかなか購入に至らないのではないかと思われる。
ただし、今回のコラボはそれとは大きく異なる。
というのも、ただ単に名前貸しプラスアルファなコラボ作品というわけではなく、タマララルフさんの哲学とブランドの遺伝子が十分以上に注ぎ込まれている上にタマラブランドを支えるかのような、いわゆるオーデマピゲが背後に回って下支えしている縁の下のような役割をしている点がすごく素敵だと感じた。
デザインや外観はデザイナーに任せ、オーデマピゲは技術面を最大にバックアップ。
まさにこういうモデルをコラボレーションと言うことができるのではないかと思う。
そして何より本当に美しい腕時計であると感じる。
オーデマピゲのピンクゴールドとTamara Ralphのテーマカラーの調和が取れすぎるくらい取れていて、違和感が全くない。
フロステッドゴールドと鏡面磨きのコントラストもまた見事である。
クロコのレザーストラップもケースと色彩を合わせている点も、ジュエリーとしてのブレスレットを意識したのではないかと思う。
まとめ
とにかく全ての点で素晴らしい一本に仕上がっている。
先ほど完売するであろうと言ったのも、102本という限定生産であるからだ。
なぜ102なのかはわからないが、本人ともう一人誰か、と残り100本を市場に投入ということなのかなと思ったがその辺は分からない。
日本にもいくつか入荷する予定であるらしいので、ブティックで見せてもらえたら是非本物を見ていただきたいと思う。