2024年 パネライ ウォッチ&ワンダーズで発表された粋な新作モデル
2024年のウォッチ&ワンダーズもなかなかに興奮しております。
腕時計の世界見本市が開催されてロレックスの新作ばかり紹介してきたが、パネライの新作もじゃんじゃんご紹介しようと思う。
こちらの記事で新作ロレックスのまとめをしているのでご参照あれ。
さて、そんなわけでパネライであるが、パネライもまた自社の技術力を存分に発揮した新しいモデルをたくさん発表しているが、その前にウォッチ&ワンダーズ前に発表された新作モデルについても先に紹介しておく。
パネライはロレックスと違い、時計の世界見本市を前に何本か新作モデルを発表していて、すでにプラチナモデルが準備されていたりヴァーガンディダイヤルがあったりと目の保養になるタイプのモデルを発表していたわけである。
しかしウォッチ&ワンダーズで発表されたものは、以下にも本気だという感じで技術力を武器に勝負を見せてきている。
あとでご紹介させていただくが、パネライもウブロやロレックス同様素材の多様性というのかそれを重視しており、自社で新しい合成素材なるものをいくつか生み出しているが、今回はその手の話である。
では本題。
サブマーシブル トゥールビヨン GMT ルナ・ロッサ エクスペリエンス エディション Ref.PAM01405
定価 : 28,413,000円(税込)
限定 : 世界限定20本
発売予定時期 : 7月
うむかっこいいし、何やらすごい雰囲気を醸し出している。
1851年から続く、国際ヨットレース『アメリカズカップ』の存在をご存知だろうか。
ヨットでのゴールを競うシンプルなスポーツで、ひとチームずつが対戦するマッチゲームが基本。
先にゴールに到達した方が1ポイントを獲得し、負けた方にはポイントがつかない。
先に7ポイントを獲得したチームが優勝となるシンプルでわかりやすいスポーツなだけに非常に白熱したバトルや雰囲気を現場で味わうことが出来る。
長く続いている理由もそこにあると言えるだろう。
野球やサッカーは細かなルールは知られていないことも多く、時代によっては若干のルール変更も行われたりする。
しかしヨットレースは先にゴールに着いたほうが勝ちというシンプルこの上ないルールであるが故に、変更する箇所がほとんどない。
わかりやすさが長寿の理由であり、アメリカズカップの歴史はワールドカップよりもゴルフの全米オープンよりも長い。
全米オープンが始まったのも1860年と古く、カップにたまを入れる、その上で打数は最も少ない人が勝ち、といったシンプルなルール故にここまで長くそして広く浸透していったのだと思う。
そして面白いことにパネライが創業されたのも全米オープンの開始と同じ1860年であるが、これを機にパネライ全米オープンモデルをコラボ作品で生み出すべきだと思った次第である。
さて、今回の新作モデルについてお話しよう。
パネライは2019年からイタリアの強豪ヨットチーム『ルナ・ロッサ・プラダ・ピレリ』とパートナーシップを結んでいる。
そのルナ・ロッサの公式スポンサーとして同チームをテーマとする腕時計を毎年発表しているわけだが、今回のモデルはルナ・ロッサが採用するカーボンボディをベースとした一本なのである。
ルナ・ロッサのヨットはほとんどのパーツをカーボンファイバーした形で構成されており、パネライはそれにちなんだ新作モデルをカーボンファイバーから成る傷がつきにくく軽量な素材『カーボテック』で発表したのである。
2015年に初めてお目見えしたパネライのカーボテック素材の一本に『サブマーシブル 1950 カーボテック™ PAM00616』というモデルがあるが、これは世界で初めてカーボンファイバーを腕時計にしようした作品である。
今回2024年にパネライが新作モデルと発表したのもこのカーボテック素材を使用したもので、ルナ・ロッサのカーボン船をモチーフに製作したのは言うまでもない。
このモデルの特はなんといっても素材とデザインにあると言える。
ご覧の通り、ルナ・ロッサ・プラダ・ピレリの船体は黒に赤がテーマカラーとなっているがこれはプラダの香水ルナロッサをモチーフにしている。
パネライは2019年以降ルナ・ロッサの公式コラボウォッチを製作しているが、中には今回と違う白ベースに赤といったモデルも存在し2023年の作品PAM01306は実に見事であった。
さて、これらの一連の流れからパネライとアメリカズカップ、ルナ・ロッサ・プラダ・ピレリとの関係やそれに関する腕時計のデザインなどを見てきたが、このモデルには機構としてGMTやトゥールビヨンが備わっている。
昨今の腕時計はトゥールビヨンを載せた限定品を販売することがちょっとした流行と化しているが、パネライにも実はトゥールビヨンは存在するのである。
まずその事実に驚いた人はいるかもしれない。
パネライにトゥールビヨンというイメージは全くなく、やはりまだおしゃれではあるがデカ厚ウォッチを作っているという感覚の方が強い。
しかしパネライは、ご承知トゥールビヨンを生み出したり、永久カレンダーを生み出したり、そして”平均太陽時間”と”真太陽時間”の差である『均似差』を表示するEquation機構も開発することに成功しているのだ。
次のモデルでも紹介するが、パネライは今回のようなカーボテックを開発したりチタンの表面をセラミック化する技術を持っていたりと、実は高いテクノロジーを備えた技術屋さんだったのである。
ちなみにベゼルはセレミック製ではなく、ブラックDLCコーティング加工がされたチタン製である。
今回のモデルは世界限定20本という猛烈に数が少なくてほぼ入手不可能な一本であるが、発売は2024年7月だそうだ。
サブマーシブル クアランタクアトロ ルナ・ロッサ Ti-Ceramitech ネイビーダイヤル Ref.PAM01466
予価 : 2,332,000円(税込)
限定 : ブティック限定
発売予定時期 : 7月
パネライが2024年にルナ・ロッサとコラボして発表した新作はもう4本ほどある。
そのうちの一本がこのモデル。
同じくアメリカズカップ出場の強豪イタリアチームのルナ・ロッサ・プラダ・ピレリの遺伝子を受け継いだモデルなのであるが、カーボン素材のものとは趣がガラッと変わっている。
ブルーパープルにグレーがかかったような不思議な色であるが、これは素材の色なのだろうか、良い風合いを出している。
この色合いはチタンを電解プラズマ酸化処理によって表面をセラミック化させた素材であり、パネライの新素材ということになる。
この技術は電解液中の水中プラズマの作用によって素材にセラミックの被膜を作り出すという技術で、新たに生み出された『Ti-Ceramitech』はこれまでのセラミック素材のものよりも内部亀裂により破壊に対する耐性が10倍も高いことが立証されている。
サブマーシブル クアランタクアトロ ルナ・ロッサ Ti-Ceramitech ホワイトダイヤル Ref.PAM01543
予価 : 2,332,000円(税込)
限定 : ブティック限定
発売予定時期 : 7月
そしてマットホワイトのダイヤルを合わせたバリエーションも用意されているが、これはこれですごくいい感じである。
太い時針と分針のフレームの黒と背景の白とのモノクロ具合が絶妙だ。
こちらのセラミックモデルもネイビーダイヤルと同様の需要が見込まれると思うが、ともにブティック限定で発売予定時期は2024年の7月ごろだ。
サブマーシブル GMT ルナ・ロッサ チタニオ Ref.PAM01507
定価 : 1,727,000円(税込)
限定 : ブティック限定
発売予定時期 : 9月
そして3本目はこれ。
スーパールミノバX2と呼ばれる新しい夜光塗料を使用した視認性を重視している一本でもある。
同じくサブマーシブルから発表されたルナ・ロッサコラボモデルであるが、これもなかなかにかっこいい。
ケースはこれまでの特殊なものではなく、グレード5チタン合金が採用されている。
グレード5チタンといえばロレックスも同じダイバーズウォッチのディープシー(3900メートルの防水性)の裏蓋に使用している素材であり、もしかすると海中潜水などに向いた素材なのかもしれない。
そんなチタン合金を使用した一本がこれで、ネイビーなブルーがプラダの香水の方のルナ・ロッサのネイビーボトルを想起させる。
おそらくはそれをイメージしてデザインしたのであろう。
サブマーシブル ルナ・ロッサ Ref.PAM01565
定価 : 1,584,000円
限定 : 300本
そしてパネライはステンレス素材でもルナ・ロッサシリーズを一本生み出しているのであるが、GMTやトゥールビヨンなどが搭載されておらず素材もアッチャイオというシンプルな腕時計という構成なので、余分なものが好きではない人にとってはこのモデルが一番しっくりくるであろう。
外側に向けてブルーからブラックにグラデーションしている文字盤は深海をイメージしているに他ならないが、ロレックスのオンブレダイヤル同様とても美しい仕様である。
シンプルかつ粋な文字盤からも僕もこのモデルが一番好きかもしれない。
ちなみにこのモデルには付属品としてブルーのストラップが同梱されており、文字盤との調和もまた良いものになるだろう。
標準装備されたストラップはブラックのセラミックベゼルと一本筋が通った強い信念のようなものを感じさせる。
まとめ
アメリカズカップとパネライ。
元々イタリア海軍の腕時計を製造していたパネライとヨットレースとの相性が悪いわけがない。
アメリカズカップのイタリアを代表する強豪チームのルナ・ロッサ・プラダ・ピレリであるが、チームもスポンサーもすべイタリアで固めたイタリアブランドらしい戦略である。
イタリア人やイタリアのメーカーは自分たちがイタリアの遺伝子を受け継いでいることを誇りに思う傾向があるが、実に素晴らしいメンタリティであると思う。
フェラーリやランボルギーニなどの世界を代表するスーパーカーが生まれ存在しているのもそのような不屈の精神性があったからなのではないかと言える。
パネライがルナ・ロッサと提携を結ぶ前に実はパネライはアメリカズカップの公式ウォッチを製造していたことがある。
『ルミノール1950 アメリカズカップ Ref.PAM00727』
と呼ばれるモデルで、アメリカ国旗をモチーフにしたステッチで他と差別化を図ったルミノールである。
文字盤には「AMERICA’S CUP」と表記され、特別感のある演出がされているが世界限定300本のみのリリースであったため手に入れることは難しいだろう。
余談ではあるが、実は日本のあるチームもアメリカズカップに参加していたりするのだ。
2017年に出場した日本のソフトバンクがそれだ。
ランドローバー・BAR(英国)やグルパマ・チーム・フランス相手に3勝しているが5敗を喫して2017年は敗北に終わっている。
僕はソフトバンクの常に新しいことに挑戦する姿勢が好きだ。
トヨタやソフトバンクなどの企業は挑戦と冒険を忘れない素晴らしい企業風土を持っており、今回パネライがルナ・ロッサ・プラダ・ピレリとコラボしたように日本のチームや組織ともコラボしてくれれば良いのになと思った次第である。