おすすめの四角いスイスメイドの腕時計
腕時計の世界は広い。
そしてその広さは膨張する宇宙のように広がっているように思う。
概念的な話ではあるが、バリエーションという意味では事実そうなっている。
あらゆる既存の固定観念を取っ払って、あらゆるメーカーが常識を打ち破った腕時計をこれでもかとたくさん発表している。
デザイン面でもあらゆる進化を果たし、過去の伝統的なデザインを踏襲しつつもモダンなスパイスで味付けしながら発展を遂げている。
そういった小さな変化はやがてそのブランド遺伝子や哲学を受け継ぎながらもやがて時と共に独自の進化を見せるわけであるが、バリエーションの広さもさながらに技術力の深さという進歩も目覚ましいものがある。
あらゆるブランドのあらゆる機械時計がデザイン面、技術面、完成度など総合的に底上げされ品質がとても素晴らしいものになっているのと同時に価格も上昇傾向にあるというのが現代の大まかな時計業界の流れである。
そんな中であるからして、腕時計というものはこうであるべきといった固定された観念がなくなりつつあり、周りを見渡してもそれぞれが各々の好みに合わせた腕時計を好きなように愛用しているのを見かけるようになった。
ある人は国産ヴィンテージオンリー、ある人はロレックスのみ、ある人は髑髏ウォッチばかり、といった好みが垣間見れる昨今ではそれを見るのが面白かったりする。
中には四角い時計に目がない、トノーしか興味ない、クロノグラフがないと時計じゃない、といった極端な趣向もその人たちの特徴を表していてナイスなキャラだなと思うわけである。
現代ではこれまで常識であった円形の腕時計が一番良いといった風潮はなくなりつつあるが、これは単(ひとえ)にジェラルドジェンタ氏のデザインのお陰であるよ言えよう。
パテックフィリップのノーチラスやオーデマピゲのロイヤルオークなどの多角形や多角形に丸みを帯びさせた腕時計が世界的人気を集めているからであるが、女性用腕時計に限っても円形同様にカルティエのサントスのような小型スクエア時計が大変人気であったりする。
今日はそういった流れで四角い腕時計に焦点を絞ってお話しようと思うわけだが、モデルはアンティークを除いたものになっている。
というのもアンティークウォッチを含めると、数が膨大になってしまうのと現代では体系化されていないシリーズで、過去の名残で存在したようなものがたくさん存在するからである。
例えばオメガやIWCには現在シリーズ化された四角い腕時計は存在しない。
IWCのダヴィンチには四角っぽい時計があったし、オメガのデヴィルにも過去には四角いモデルが存在していた。
ロレックスのチェリーニもそうであるし、現存するシリーズでも過去にあらゆるタイプの時計を作っては消えていったという流れがあり、現在では今挙げたシリーズでは全てが円形で統一されていて四角いモデルはアンティークでしか残っていない。
今回の条件としては現存する、体系的に四角で固定化されたシリーズのもののみを紹介しようと思う。
それでは順不同で見てみよう。
タグホイヤー モナコ
モナコは痺れるくらいかっこいいスクエアウォッチであるが、レーシングと関係あることは皆さんご存知だと思う。
1969年に登場した腕時計で、世界初の角形防水時計として誕生したわけであるが、モナコグランプリがその名前の由来となっている。
スティーブ・マックイーンが出演した「栄光のルマン」で着用していたこともモナコの人気に火をつけた。
元々モナコはホイヤー社の腕時計であったのだが、1985年にタググループに買収され、以来タグホイヤーとブランド名を改めている。
以下タグホイヤーと呼ぶことにするが、タグホイヤーのモナコのクロノグラフはなぜかリューズが左にある、と不思議に感じたことがある人もいらっしゃることだろう。
これにはクロノグラフの歴史が関わっているのだが、ホイヤー社とブライトリング社、他で当時クロノグラフ機構を生み出そうと研究開発していた。
当時の設計や技術では機構的にリューズを左にしないとうまくクロノグラフを開発できないということでリューズは左、プッシャーは右といった構造になったことに端を発するわけだが、その構造的な名残をデザインの一つして受け継いだままモナコは独自の発展を遂げている。
左利きとして利用できるメリットがあるモナコはレフティモデルとしても需要があったりする。
デザイン面で他とは違うという点でもかっこいいが実用面でも重宝されているのであるがこれは怪我の功名である。
結果オーライであるが、タグホイヤーのモナコは他と違った部分が多く、一目でモナコだとわかる点でも人気がある。
モナコしてるんですね、という会話が頻発しやすいのもモナコならではアドバンテージであり、オシャレな印象を与えることも大いにある。
僕一推しの四角い時計といえばやはりモナコなのである。
ウブロ スクエアバン
ウブロが2022年に新たなシリーズを生み出した。
四角い腕時計のスクエアバンという新シリーズで、これまでのウブロの哲学を四角いケースに収めたよという感じのシリーズであるが、これは四角い腕時計が好きな人やラグジュアリースポーツが好きな人にとってはかなりの良い衝撃を与えたのではないかと思う。
僕が一番気に入っているのは、シリーズが違うからといって中身を簡素にしたりこれまでと違った哲学を与えるといったことをしていない点である。
つまり、これまでのウブロが好きだった人はウブロの斬新さと大胆さに惚れ込んでいたわけであるから、その要素を四角い腕時計でも同じように楽しめるという点で失客することなしに良いインパクトを世界中に与えられたわけだ。
そして外観面でもウブロらしさ全開で、微塵もウブロらしくない点が見当たらないところがデザイナーの見事さを感じさせられる。
技術的な要素を丸ごと移植すれば四角的にもウブロらしさが見て取れるのは確かに当然かもしれないが、それでも時代の流れに乗った、ラグジュアリーでありながらスポーティなラグスポ的な枠でまとめているというところもデザインを含める戦略的な面で見ても見事さを感じるのである。
そういった意味では新たなシリーズを生み出したことは大成功であると思うし、実際ラグジュアリーさが半端なくかっこいい。
やはりウブロは質的要素を全てのモデルで共有し、外観で差をつけるといったヴィジュアル的な勝負をしているように感じるが、そのあたりが他とちょっと違った作戦であると感じる。
しかしこういったやり方にはメリットが結構ある。
ユーザーが好みの腕時計スタイルを機能に妥協することなくチョイス出来るからだ。
こういったメーカーは珍しく、他にそのようなメーカーを探そうと思っても難しい。
確かにまだまだ始まったばかりのシリーズであるし、今後どのようなモデル展開をするかわからないが、スクエアバンにトゥールビヨンを載せたり、MPシリーズに採用されたりということもあり得るのではないかと感じた。
ベル&ロス BR01(46mm) or BR03(42mm)
ご存知、四角といえばベル&ロスが今一番有名かもしれない。
2005年に発表されたBR01というシリーズが有名な同ブランドの時計であるが、翌年にはBR03という同じようなスタイルのシリーズが発表されていて、どっちがどっちなのかわからない、もしくはBR01だと思っていたのが実はBR03だったということもあるだろう。
これらの違いは主にケースサイズである。
2005年に先に登場したBR01のサイズは46ミリという巨大さであるが、円形の46ミリとスクエアの46ミリでは視覚的に感じる大きさが違う。
視覚的な違いだけではない。
面積を実際に計算すると以下のようになる。
円形の腕時計の面積 : 2.3 x 2.3 x 3.14 = 16.6106
四角い腕時計の面積 : 4.6 x 4.6 = 21.16
円形時計に比べ、四角い時計は同じサイズ表記でも、46ミリの場合27%も大きくなってしまうのである。
であるからして、デカ厚時計のブームが少し落ち着いている&日本人の使用ということになれば42ミリの方がおそらくは人気が高いのではないかと思う。
ちなみに42ミリの四角い時計の面積は 2.1 x 2.1 x 3.14 = 13.8474
ということになり、円形の時計よりも面積は小さいが出っ張っている角の部分で面積の差は数値通りではないと考えられる。
さて、そんなわけでベル&ロスの腕時計であるが、これは特殊時計という感じがするデザインで、これは飛行機の計器からデザインの着想を得ていて、概してパイロットウォッチを前提としている。
もちろん普段づかいとしての使用が一番の条件であるが、パイロットウォッチ・アヴィエーターウォッチという要素は実際は視覚的・意味的な部分が大きい。
とても男性的なかっこいい腕時計であるし、僕もベル&ロスの腕時計は一本欲しいと思っている。
四角というだけである意味おしゃれに見えるし、ベル&ロスのベル&ロスにしかない視覚的な要素に惹かれる部分があるからだ。
基本的に四角い腕時計というのはそれだけでユニークな存在であり、それをブランド独自のパッケージを施しているわけであるが、オリジナルの世界観がひしひしと感じられるのはスクエアウォッチのメリットであると言えるだろう。
円形よりも差別化が図りやすいというのはまだスクエアウォッチが発展途上であるという裏返しなのではないだろうか。
カルティエ サントス
1904年、ロレックスが誕生する前年にカルティエのサントスは世界初の男性腕時計として誕生したパイロットウォッチであった。
資産家の息子で飛行機乗りであったアルベルト・サントス=デュモンからの依頼で開発したサントスは飛行中の懐中時計は不便で危険だという理由から腕に着用するタイプのメンズ用の腕時計を生み出したわけだが、これが世界初の男性用腕時計として言われるようになった所以である。
世界初のパイロット腕時計であるとも言えるだろう。
しかし現代のサントスにはそのようなイメージは全くなく、サントスは高級ラグジュアリーウォッチとしての位置を確立している。
1972年にオーデマピゲのロイヤルオークが誕生してからは、数十年経っての後付けの理由ではあるがラグジュアリーなカルティエのサントスに若干スポーティさが混ざっているように見えるようになってきた。
これは後から生まれたラグスポの流れであるのだが、ケースやブレスレットの感じが現代のラグスポを形作る特徴に該当する部分が見受けられるからだ。
おそらくはそれが原因でカルティエのサントス人気が生まれたという恩恵もあるのであるが、確かにサントスは現代風なデザインになっていてラグスポファンにはかなりウケが良いと思われる。
パテックフィリップのノーチラスやオーデマピゲのロイヤルオークが好きな人はカルティエのサントスもきっと大好きであろうと思う。
スポーティさはないのにどこかジェラルドジェンタのデザインを引き継いでいるような外観をしており、高級感の塊であるようなサントスがそのように見えるのは不思議であるが、そこに魅力を感じるのである。
まとめ
まとめると、四角い腕時計に見惚れる気持ちがすごくよくわかる。
個人的にはカルティエのサントスとタグホイヤーのモナコを交互で愛用したいと思っていたが、スクエアバンやベル&ロスも実際一本ずつくらいは欲しい。
特にスクエアバンの高級感はとても興味を惹かれる思いがする。
バリエーションによってはドンピシャなモデルが登場するだろうが、個人的にはステンレスで全てをまとめて欲しいとも思う。
いずれにせよ四角い腕時計を見てきたが、やはり数としてはまだかなり少ない。
上述したが、バリエーションを生みやすく他と違った特徴や世界観を生み出しやすいというのはまだまだ発展しきっていないということであり、参入するチャンスが大いにある土壌であると言える。
今後他のメーカーが参入してくることが大いに考えられるのが四角い時計というカテゴリであるが、そうなるとベル&ロスにとっては脅威である。
どのような動きでスクエアウォッチのシェアが変わってくかはわからないが、ロレックスが四角い腕時計を出してくれればまた面白い世界になるのではないかと思ったのだった。