薄い時計の魅力
薄型腕時計の良さはいくつかある。
まず薄型が好きだという点で薄型ウォッチは所有欲を持たせてくれる。
小さいものが好き、薄いものが好き、丸いものが好き、角張っててエッジが効いたものが好きといった嗜好は人間それぞれにある。
例えば僕は車でいうと横から見た時に薄いモデルが好きだ。
前、後ろから見た時には幅が広いものが好きであって、音に関して言えばうるさいものが好きである。
腕時計に関しては形状にそこまでの要求はないにしろ、薄い腕時計というのは機械やガジェットなどが好きなとりわけ男性にとっては、自然と興味の対象になるのである。
薄いケースの中に収められた複雑な機械という存在は、そこにそれだけのものを収めるのにはとてつもない技術力を要するわけでそこに歴史や苦労という夢を追いかけた努力というプロセスが感じ取られ、ロマンという言葉に昇華されて後に僕たちの心に残っていくのである。
腕時計でなくとも、携帯電話、テレビ、パソコン、キーボードなどの機械類で薄型化されたものは誰にとっても魅力的に映るものである。
広告宣伝で薄さを謳うことは有効的であり、購入する理由になりうることは皆さんも直感的に理解できるのではないだろうか。
自分が薄型の機械が好きであるなら言うまでもないが、薄いものに格別に惹かれるというわけではない場合でも薄型化された製品が魅力的であるだろうというのは理解出来るのである。
そういった観点からすると、薄い腕時計を生み出し、それ以上にどれだけ薄く出来るかという技術力と物理学の限界に挑戦する行為そのものが製品を作るという異常に男の野心を駆り立てるのである。
時計メーカーに勤務する人たちの多くは男性である。
メーカーはコンクリートの建物に収まったただの会社組織ではない。
熱い思いや情熱を持った人間たちが集まった集合体という生き物なのである。
ここではどれだけ薄い腕時計が生み出されているかを紹介したいと思うが、よくもまあこんなに薄い腕時計を作ったものだと感心しても仕切れないほどのものを各社作ってしまったのである。
クオーツですらここまでやるのは難しいであろうと思う。(もしかしたらある一定の薄さ以下にしようと思ったらクオーツである方が逆に不利になるのかもしれないが)
ジャガールクルト マスターウルトラスリム シリーズ
ピアジェ アルティプラノ シリーズ
ブルガリ オクト フィニッシモ シリーズ
リシャールミル RM UP-01
ジャガールクルト マスターウルトラスリム
まずはジャガールクルトのマスターウルトラスリム。
初っ端からすごい薄いモデルだ。
これで7.8ミリという厚さで、これ以上薄くなくても良いくらい十分に薄いわけであるが、もっと薄いモデルを紹介していく。
ピアジェ アルティプラノ
二番目はピアジェのアルティプラノ。
6.4ミリという途轍もない薄さを実現。
1940年代から自社の腕時計を製造しているピアジェの専売特許的な個性として薄さが挙げられる。
全てがこの薄さではないにしろ、あらゆるモデルが基本的に薄い。
ブルガリ オクト フィニッシモ
そして次はブルガリのオクトフィニッシモ。
これまた非常に薄い。
10ミリでも薄い部類の腕時計に入るわけだが、こちらも6.4ミリという強烈な薄さを実現している。
オクトフィニッシモの中には5.5ミリという化け物的な薄さを実現させたモデルもあって、どれだけ薄い腕時計を作れるかという限界に挑んでいるような一本だ。
リシャールミル
そして最後はリシャールミル。
RM UP-01というモデル。
もはや笑えるレベルである。
その薄さ1.75mm。
もはやこれはコンセプトカー的な存在である。
モーターショーなどで展示されるコンセプトカーなどは、販売を目的としているわけではない奇抜なモデルを投入することが多いが、リシャールミルのRM UP01はそのコンセプトカー的な位置付けにあると言える。
実際に販売されて有名人や富裕層に所有されているのだが、これでもかという技術力を見せつけ、極端なまでにコンセプトを体現化しているところはまさにそれだ。
このモデルのコンセプトというのが何度も言っているように、ただただ薄いということであるのだが、この腕時計のすごさは動画でご確認いただけたらと思う。
実は薄い腕時計というのは、大きければ薄くしやすいという特徴がある。
例え薄い空間であっても、その分面積を大きくとれば容積は広くなるからだ。
とは言えここまで薄く出来る技術力には脱帽であり、キャッシュカードやクレジットカード同等の薄さ(1ミリ以下)の腕時計が登場するのも期待している。
やはりめちゃくちゃ薄い。。
1.75mmという薄さはやはり何度見ても驚いてしまう。
クレジットカードを腕に引っ付けているような感覚になるであろう。
これだけ薄ければ衝撃も気になるところである。
構造としては、家でいう平家である。
どれほどの強度や耐久性があるのかは未知であり、価格も2億5000万円するので試し使いしようというレベルではない。
完全に屋内用の腕時計である。
階段から落ちたりしてもいけないので、平家で使用することをお勧めする。
平家用の腕時計というコンセプトというのが面白いw
さてそれに対抗するかのような一本が実は存在する。
ブルガリ リベンジ
というのがこのモデルである。
2022年の新作として登場した、ブルガリ オクトフィニッシモウルトラ である。
その薄さなんと1.8mm。
と、リシャールミルのモデルより若干、と言っても誤差のような範囲だが、厚みがあるのである。
どちらも2022年に発表されたモデルで、薄さを競った結果が1.7ミリ-1.8ミリという世界なのだろうが、今後これ以上に薄い腕時計は登場すると思う。
というのも、
オクトフィニッシモウルトラは手巻き、RM UP01は実は自動巻きでも手巻きでもなく道具を使って巻き上げる構造になっている。
つまりオクトフィニッシモウルトラが手巻きでなければならないという制限から外れ、面積をより広くとっても良いという自由を与えられるならば、さらなる薄さを実現できるのではないかとも思える。
ここまでくると構造そのものを変えないといけないことになるのかもしれないが、
技術的にはブルガリの方が上なのではないかと思う。
このモデルのすごいところは、リューズを縦ではなく、ギアと平行になるように並列に並べた構造をとったことだ。
そうなると面積が広がる可能性があるのだが、そこをうまくコンパクトにまとめていてこの薄さだ。
こちらでも若干紹介しておられるが、すごく薄い。
まとめ
話は、変わるようで変わっていないのだが、コンセプトカーを作るメリットは他にもある。
あらゆる技術や奇抜なアイディアを投入したコンセプトカーに使用されたテクノロジーは、日常モデルに投入することが可能だ。
リシャールミルやブルガリでこれほどの薄さを実現させた技術は通常モデルにも使うことが出来、全体的に薄い腕時計が作れる他に、あらゆる機構を搭載する際にも役に立つこと受けあいだ。
腕時計は機構を詰め込めば詰め込むだけ大きくなる。
面積か厚みか、要するに容積が増え、体積が増してくる。
それをコンパクトにする技術がここに詰まっているのではないだろうか。
トゥールビヨンや永久カレンダーなどが搭載されたモデルがどれほど薄くなるのかというバトルを繰り広げることも出来る。
といった具合に、薄さを競う技術競争は無駄ではないのである。
さらに土壌を広げると、腕時計の世界を超えて、例えば車であったりスマホであったり、パソコン、テレビ、その他考えもつかないようなものへ技術を応用することができるのである。
というわけで、
実用的な薄さのものや、話題性のあるモデルたちを紹介したわけだが、機械時計はコンセプトを変えるとたちまち違った勝負が繰り広げられ、奥が深いことを新たな角度から常に感じさせられるのである。
腕時計が好きな前澤友作氏は最後のリシャールミルの一本を所有しておられ、インスタグラムでも着用した姿を披露しておられた。