パーペチュアル1908の評価
ロレックスがドレス系の腕時計にも力を入れているのか、2023年、1908という新作を発表した。
52508と52509というリファレンスを与えられ、チェリーニのそれとよく似ていることからロレックスに詳しい人間ならそれが一目でドレス系のシリーズだということがわかるであろう。
ロレックスがシリーズ名に数字だけを使用したネーミングをするとはなかなかに意外であったし、2023年はかなり多くの冒険をした年というイメージがこれで固まった。
元々ロレックスはスポーツタイプの腕時計をメインに作っていて、今でもその姿勢は変わらないがなぜかここに来てドレス系の新シリーズを投入するという新たなジャーニーが始まったような気がしている。
時代はSNSとラグジュアリーの時を迎え、もしかすると新しいタイプの顧客も取り込んでしまおうということなのかもしれないが、そこはロレックスのみぞ知ることである。
そんなわけで今日は1908という謎めいたアンティークな美を振り撒く新シリーズを紹介してみようと思う。
1908 イエローゴールド ブラックダイヤル Ref.M52508-0002
ケースサイズ : 39mm
防水性 : 50m
定価 : 3,170,200円(税込)
1908 イエローゴールド ホワイトダイヤル Ref.M52508-0006
ケースサイズ : 39mm
防水性 : 50m
定価 : 3,170,200円(税込)
1908 ホワイトゴールド ブラックダイヤル Ref.M52509-0002
ケースサイズ : 39mm
防水性 : 50m
定価 : 3,348,400円(税込)
1908 ホワイトゴールド ホワイトダイヤル Ref.M52509-0006
ケースサイズ : 39mm
防水性 : 50m
定価 : 3,348,400円(税込)
まずはこの4種類のモデルで展開されている。
基本的にIWCを象ったようなスタイルになっていて、ポルトギーゼの手巻き時計のようなスタイルにかなり近い。
ケースの形状やスモールセコンドの配置、レイルウェイトラックなどの文字盤外周などなど実際よく似ているというのが正直な感想。
針が違う形状をしているが、このブレゲ針はブレゲに元々あるタイプの針で、IWCのポルトギーゼも違うモデルに採用している。
組み合わせの問題といったところであるが、実際かなり似通ったスタイルをしているので、もうちょっとロレックスだけのオリジナルなデザインを採用して欲しかったと思う。
反対にチェリーニシリーズはかなりよく出来たドレス系ウォッチで、デザインに関しては文句の付け所がないくらい美しい上に、オリジナリティにも溢れ、スポーツ系を得意とするロレックスらしからないデザインには良い意味で裏切られた感じだ。
言うなれば運動が出来る人間が芸術面でも優れた才能を見せ驚かせてくれたようなそんなサプライズであるが、1908には外観でいうサプライズはほとんどなく、やはりドレス系は苦手なのかもしれないと思ってしまったのである。
しかしロレックスの真髄はデザインではなく中身。
文字盤を見ていただければお分かりになると思うのであるが、『SUPERLATIVE CHRONOMETER』という記載がある。
僕が1908の中で気になったのがここである。
ロレックスなんだから当然でしょ、と思われる方もいるかもしれないが、そこがまた素晴らしい先入観なのである。
ロレックスだから当然、確かにそうなのだ、そう思われた方は正しい。
そしてロレックスがそういった先入観を正しく与えていることからもメーカーの並々ならぬ努力を感じるのである。
正直堅牢性を見た目から既に発しているスポーツウォッチは安心出来る。
しかしドレス系にどれほどのタフさやスポロレにある性能を発揮できるかは、心配性の人にとっては若干の不安材料である。
そこにある「ロレックスなんだから当然でしょう」という正しい判断がロレックスというブランドを素晴らしいものにしていると言えるのだ。
その証として『SUPERLATIVE CHRONOMETER』というクロノメーター検定協会のお墨付きを得たという表記を記載することを許されているという点がある。
時計ファンには既知であるが、このテストというのが実力不足の時計メーカーにとっては頭を悩ませる試験であるが、ロレックスにとってはなんともないハードルなのである。
通常のクロノメーター検定協会のテストではムーブメントのみを検査するのに対し、ロレックスはムーブメントをケースに収めた後で試験に挑む。
試験内容は、5つの固定された姿勢と3つの温度下によって15日間昼夜問わず試験するというものである。
上述したが通常は機関に送られたムーブメント自体を検査するのであるが、ロレックスはケーシングして検査する。
その理由としてはやはり通常使用を想定してのことであると思われる。
ムーブメントのみがテストに合格しても、製品として完成したものがダメであれば全く意味がないのである。
ロレックスはユーザー第一にその点をめちゃくちゃよく考えていて、通常使用での精度、表示通りのパワーリザーブ、自動巻きの正常性、そして防水性や耐熱性、をしっかり日常レベルで検査するようにしているのである。
僕がロレックスが好きになった理由がそこだ。
ユーザーファースト、ユーザーフレンドリーなクオリティを提供するブランド、それがロレックス。
そして精度の件だが、クロノメーター検定協会が与える高い精度の基準は日差-4秒〜+6秒という範囲に収まっているかであるが、ロレックスは全ての個体が日差-2秒〜+2秒に収まっている。
全てだ。
協会が認定を与える腕時計の数はスイス腕時計の中でもたった3パーセントであるらしいが、ロレックスの精度だと1パーセントにも満たないであろう。
ロレックスは独自の独立した検定協会をつくるべきだと感じたわけだが、そうなると価格も上昇するから勘弁してもらいたいものである。
まとめ
さて、そんなわけで1908に話を戻すが、デザイン面は確かに美しいが感銘を与えるものではなかったかもしれない。
いや、確かにアンティーク調で美しいし、申し分ないデザイン性を備えているのはわかる。
しかしオリジナリティにかけるという点では少しマイナス点を与えるべきだろうと僭越ながら判断したわけであるが、最終的に性能という面がそのデメリットを補うどころか1908をより引き立てているように感じさせるわけである。
確かにこの手のアンティーク調のドレスウォッチはいくつか存在するが、性能という面を考えると後発的ではあるがまた一歩先を行ってるなという印象を与える。
ロレックスはこの辺がずるい。
彼らが生み出す腕時計はその高いクオリティから他社を蹴散らす破壊力をいくらでも行使できるのであるから。
IWCやA.ランゲ&ゾーネの縄張りに踏み込んできたというような印象も受けた。
実際1908というシリーズを生み出したことでIWCファンは無視できないのではないかと想像できる。
実際僕はロレックスに惚れるまではIWC一辺倒でポルトギーゼも所有すらしていたわけであるが、1908はドレス系ファンを惹きつける最強の武器の一つになるうるのだと思ったのである。
なにせロレックスにはクオリティと実用性という最強の武器を持っているのだから。
最後に現在の1908の価格を見てみるに、定価を大きく超える450万円が最低ラインとなっている。
価格の上昇を考えるとやはりロレックスのスポーツモデルのように人気や注目度は高いのだと思われるし、実際このような価格帯で推移するなら資産価値としても十分に所有する価値があると言える。
スポーツモデルに対して価格の上昇などはチェリーニの例から見ても期待は出来ないが、価値が下がるということは考えにくい。
金の埋蔵量も減る一方であるし、ゴールドを使用した腕時計を持っていること自体が資産であり、上述したロレックスの腕時計としての価値がその資産的価値を底上げする。
僕の予想ではスポロレの比ではないが緩やかな価格上昇を見せると考えており、それと連動して当然の如く買取価格や買取相場も上昇していくであろう。
今はまだ売却する旨味は少ないので基本的には長期ホールドという形で所有するのが良いと思われるが、この手のドレス系ウォッチは投資対象とするには効率は悪い気がするのである。
ただ緩やかな値動きというのは下がる時も緩やかであるから、リスクヘッジにはなりえるのかもしれない。
うむ、やはりかなり美しいモデルではある。
ということで、所有してもいないが勝手なレビューをしてみた。
個人使用であるなら大いにおすすめである。